諫山裕の仕事部屋〈blog〉
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2008年06月22日

 前日の書き込みにも関連したことなのだが。
 いちおう、グラフィックデザイナーという肩書きで仕事をしているが、じつのところ自分が思っているデザイナーとはほど遠い仕事内容になっている。
 会社の社員という立場もあって、自由度は低いし、裁量権はないに等しい。クライアントや上司の指示に従って、型どおりに作業をすることが大部分だからだ。

 「会社の中のパワーバランス」にも書いたように、私が考える「いいデザイン」とは「オリジナリティ」だと思っている。
 オリジナリティを実現するためには、アイデアはもとより、その制作過程で1から作り上げていく必要がある。それは「生み」の苦しさを伴うものだし、お金と時間もかかることを意味している。
 しかしながら、多くの妥協を余儀なくされるのが実態だ。

 それは業界が違っても、同じなのだなと思った記事。
第28回:オリンピック水着騒動に見た、国際ルールを超えるチカラ:NBonline(日経ビジネス オンライン)
“我々にとっては勝つことが目的だ。しかし、クライアントにとっては問題を解決できるアイデアだ。だったら、100%にすべきじゃないのか?そうでなければ、彼らの気持ちに訴えることはできないんじゃないか”

 みんなの心の中は、「やってみなきゃ分からないだろう」という気持ちと、「そこまでの自信はないなあ」という揺れ動きでした。

“だから、私はすでにクライアントの社長に電話をして延期の了承を頂いた。1週間しかないが、100%を目指して最後まで苦しもう”

 いろんな思いが詰まった空気でしたが、分かったことはたった一つ。目的は、クライアントの問題を解決するアイデア。プレゼンすることではなく、クライアントが喜ぶこと。

 きっと日本人の社長なら、日程を変えてまで、100%を目指せとは言わなかったでしょう。最善を尽くしたとしか。

 しかし、ガイジン社長はそのためならハードなネゴシエーションも辞さない。この違いが、私を驚かせました。目的のためなら、少々のルールは変えさせる。

 こういう会社というか仕事ができるというのは、うらやましい気がする。
 コスト削減は、どこの会社でも必要なことではあるが、最初にコスト削減ありきで仕事を進めていたら、妥協の産物しかできあがらない。
 それは100%の仕事ではないし、オリジナリティもない。

 広告や誌面を構成する要素として、ビジュアルは重要なものだ。そのイメージが大きく左右するといってもいい。
 あるアイデアやコンセプトに基づいて、あるイメージを作り上げるわけだが、その方法はいろいろとある。
  (1)写真を使う
  (2)イラストを使う
  (3)文字要素だけでデザインする
 大きく分けて、この3つ。
 その中で、たとえば写真を使うにしても、
  (A)イメージに合致する写真を新たに撮影する
  (B)イメージに近い既存の写真を使う(レンタル・フォト)
  (C)市販の著作権フリーのCD画像集から探す
 といった方法がある。
 ベストなのは(A)だ。しかし、制作費は高くなる。撮影するとしても、カメラマンは誰を起用するのか、モデルを使うのか、ロケ地はどこなのか、といった条件でかかる費用は桁違いになる。有名カメラマン、有名モデルあるいは芸能人、海外ロケ……などとなれば、数千万円規模の仕事になるかもしれない。
 逆に(C)であれば、CD-ROMの代金が数千円で済んでしまう。
 最高のものを作るのであれば(A)だが、クライアントにそれだけの広告費を出す余裕がなければランクを下げるしかない。
 妥協の始まりだ。

 レンタル・フォトを使うにしても、1点10万円以上するものから2万円のものまで、ランクはいろいろだ。いいものは高いというのが、ここにも当てはまる。
 とはいえ、予算がないということになれば、ランクを落としていくしかない。
 2万円の予算すらないとなると、市販のCD-ROMになってしまう。
 クライアントはなるべく安くていいものが欲しい、という矛盾したことを要求してくる。
 妥協に次ぐ妥協で、最低ラインでの制作費になってしまうと、もはやそこには最高のものもオリジナリティも存在しない。
 それでも仕事として成立してしまうから困ったもの。
 概してこういう仕事が多いのだ。

 低いレベルで低いクオリティの仕事ばかりしていると、最初から無理な発想はしなくなる。どうせ予算はないのだから、ありあわせのCD-ROMで間に合わせよう……という発想にしかならない。
 これではデザイナーとしてのレベルは上がっていかないし、会社としてもビッグプロジェクトを企画して動かす能力は蓄積されない。その結果、低いレベルの仕事だけで満足してしまい、成長が止まってしまう。
 そのことが給与が低いまま……という悪循環になっていくのだろう。
 悲しいかな、それが現実なんだよね。

(16:11)

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