初音ミクのライブを見て……クールジャパンに必要なこと

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昨晩、で、初音ミクのライブステージの放送があった。
初回放送は見逃していたのだが、リピート放送をやっていた。

初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai(ミクパ♪)-39's Spring the 3rd Synthesis-|WOWOWオンライン

初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai

初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai

初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai

初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai

私はCGアートを作るし、DTMで音楽も作る(最近は作ってないが…)のだが、じつは初音ミクを使ったことはない。それでも、アルバムのいくつかは持っていたりする(笑)。

▼これは傑作だよ。
Hatsune Miku Orchestra
Hatsune Miku Orchestra [CD]

初音ミクのライブ……
なんか、妙に感動してしまった(^_^)b
人間の歌手のライブとは、異質の感動だ。
バーチャルアイドルで、映像としてピクセルだけの存在だが、音楽は本物だ。映像は作り込まれた完成度の高いCGではあるのだが、音楽と合わさるとリアリティが増す。

私たちがに見ている日常の情景……というのも、じつのところ「脳」が作り出すバーチャルではある。目から網膜を通って、視覚信号が脳に届くと、脳は「解釈」してイメージを作り出す。それを私たちは「現実」と認識している。

錯覚や錯視が起こるのは、脳がイメージ処理を間違ってしまうからで、私たちは正しい姿を見ているとは限らない。
厳密には目から入った光が、脳でイメージを結ぶまでに約1ミリ秒(1000分の1秒)かかるとされているので、私たちが見ている世界は1000分の1秒過去の世界なのだ。
「現実」と認識するものには、「仮想」が織り込まれている。

バーチャルで産み出された初音ミクが、リアルな観客の前で歌って踊る。
その様子を、奇異な目で見る人も少なくないだろう。
実在のアイドル……たとえばAKBなどに夢中になるファンと、似てはいるが本質的なところが違う。
生身のアイドルは、「実在する」という強固なリアリティがある反面、歳は取るし永遠の処女ではない(笑)。身近でありながら、遠い存在であり、アイドルでいられるのは期間限定だ。

アイドル」とは、「偶像、聖像、崇拝される人」のことだ。語源には2つの説があり……
(1)語の「エイドーロン(eidlon)」が語源で、「形のある像、神像、幻影」の意味から派生した。
(2)ラテン語の「イドラ(idola)」を語源とし、イデア(真実)に対して幻影や虚像を表す語を意味した。
辞書によっては、両方を記しているものもある。

アイドルの本来の意味からすれば、初音ミクは的なアイドルだろう。永遠の少女であり、実体を持たず脳内にのみ存在する。映像と声でリアルとの接点を持つが、作り手によって自在に変化する。

のキャラクターにも類似するが、明確な物語があるわけではなく、ファンの作る「歌」によって物語が積層されていく。
音楽というのが、心を動かす。
感情に働きかけ、感情を揺さぶるのが音楽だ。

現代のアイドルに音楽が不可欠なのは、感情に訴え、ファンの心を魅了する必要があるからだ。
美人の女優やモデルは多いが、見た目のビジュアルだけではアイドルになりにくい。だから、アイドルになるには下手でも歌を歌う。それが必須条件といってもいいかもしれない。

初音ミクは音楽ソフトだが、アニメ的なキャラクターをともなっていることで、クールジャパンのコンテンツのひとつとして見られている。
基本的には、日本語でも英語でも入力は可能という点では、グローバル化に対応しているともいえる。

しかし、本質的には日本のマーケットに特化し、ガラパゴス化を追求したものだと思う。海外のファンがいることはだが、かなりマニアックなファンにすぎない。
このことは日本のアニメでも同様だ。海外に輸出されている作品もあるが、現地の言葉に吹き替えられているとはいっても、そのファンは限定的だ。

宮崎駿の作品は例外的で、海外にいる日本アニメのファンは、熱狂的な一部の人たちでしかない。
クールジャパンは、ガラパゴス化を追求したからこそ「クール」と評価されているのだと思う。

口語で使われる「cool」の基本的な意味は、「すごい」とか「素晴らしい」ということであり、普通じゃない事象や状態に対して使われる。
逆にいえば、クールジャパンをグローバル化という平準化をしてしまったら、「クール」じゃなくなるということだ。
日本特有のガラパゴス化をしたカルチャーだからこそ、クールジャパンといわれる。

そもそも日本語自体が、小さな固有の言語であり、ガラパゴス化されている。
なんでもかんでも「グローバル化」しようとする傾向にあるが、グローバル化=英語化という図式は、グローバル化=アメリカ化だともいえる。

たしかに、アメリカの存在感や影響力は強いし、ハリウッド映画は世界に通用する。だが、わざわざ他国に合わせてローカライズしているわけではない。アメリカ流に作ったものは、そのまま輸出するだけ。字幕や吹き替えは、輸入した国がやる。アメリカは作品を売るだけでいい。
早い話、アメリカは「オレが世界基準だ」という立場だ。
IT業界で、OSやCPUの主導権をアメリカが握っているのは、世界基準を自分たちで作った結果。

クールジャパンを世界に売るには、グローバル化という世界に合わせて作品を作るのではなく、ガラパゴス化を追求してもっとクールにすることではないかと思う。
それでも海外から「買いたい」といわれるような作品や商品。

そのためには、アニメーターやプログラマーが稼げるような状況を、国内で作る必要がある。アニメーターは貧乏の代名詞でもあるが、医者と聞けばリッチなをイメージするように、アニメーターがリッチな職業だと思われるようにならないとだめだ。

▼参考記事。
「クールジャパン」は民間主導でいいんじゃないの(山本 一郎) – 個人 – Yahoo!ニュース

私は、こういう現象の原因というのは、コンテンツのプロが疲弊しているからだと思います。というのも、給料が安すぎる割に仕事量が多く、疲れ果てているのです。ゲーム業界もアニメ業界も、40代で年俸200万円台という人はゴロゴロいます。そういう人を雇って業者が儲かっているかというと、これまた儲からないのです。政策主導で「海外に売っていくぞ」というよりは「日々のカネが回っていない」という実情がある以上、業界の現状というのはそんなところにカネを積むのであれば最低限クリエイターが飯を食えるようにして欲しいと思うのです。

初音ミクのライブは、近を先取りしている。
現状は、あらかじめ作られたCGキャラの動きを、ライブに合わせて再生しているにすぎないが、それがリアルタイムに動けるようになったら、もっとクールだ。観客の反応に対して、即興でリアクションできれば、バーチャルキャラクターがよりリアルになる。

それは、人工知能へとつながっていく。
真の物語は、まだこれからだ。

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